香川大学メールマガジン 第129号  2009年11月26日



香川大学メールマガジン 第129号 2009年11月26日 受信トレイ
香川大学 広報センター 2009年11月26日14:18
To: nakamurayoshio@gmail.com
返信 | 全員に返信 | 転送 | 印刷 | 削除 | メッセージのソースを表示
∽∽∽∽ Biweekly ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

香川大学メールマガジン 第129号  2009年11月26日

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

★学長・理事随感 ★ホットニュース ◎話題!! ☆香川大学なんでも情報
香川大学ホームページ》http://www.kagawa-u.ac.jp/ ・なるほど連載

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

□第129号もくじ
■オリーブの葉かげで―――理事随感
▽国民の品位をなくした自己主張
■話題:遺言について........................................石堂 典秀
■研究室の小窓:3.ソフトウェアの品質..........古川 善吾、高木 智彦
■あとがき


□ご案内 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
香川大学大学院経済学研究科 大学院入試説明会
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/graduate-school/setumei1216.html
∇平成21年度地域貢献推進経費中間報告会
&第3回産学官連携戦略展開事業セミナーのご案内
http://www.kagawa-u.ac.jp/itwinfo/i2566/file/11.20chizai_OC.pdf
∇平成21年度公開講座
http://www.kagawa-u.ac.jp/lifelong/
∇大学案内デジタルパンフレットをHPでご覧になれます。
http://www.kagawa-u.ac.jp/itwinfo/cl1000023/

                                                                                                                                          • -

★☆★☆ ⇒《オリーブの葉かげで》
国民の品位をなくした自己主張
香川大学理事・副学長(医療担当)香川大学医学部附属病院長―――石田 俊彦

ルネッサンス芸術発祥の地、イタリアを訪れて至る所がスプレーで落書きされて
いるのを見て驚きました。誰も気にとめていない、消そうとしないことは国民性の
違いなのかと変に感心しました。日本ではこのような落書きは、悪質な犯罪として
とらえられ、国民の社会道徳の欠如、品位の低下が原因と論じられています。

この現象は今に始まったことではなく、明治の小学校でも、公園の桜を折らない、
落書きをしない、汽車の中で席を独占しないなどと公徳心養成の必要性が取り上げ
られていました。戦前、戦後においても同じ注意が繰り返されていて、社会生活に
関する礼儀作法は国民の品位向上に重要であると強調されていました。しかし、最
近は、礼儀作法は死語となり、道徳、公徳心などを説くと変な目で見られることが
ありませんか? 試験勉強で頭が一杯の学生諸君に聞きますが、皆さんは道徳、公
徳心を常日頃から培ってきていますか?

学校での先生と生徒とその保護者との関係は、病院での先生と患者とその家族と
の関係とよく似ています。かつては教える側と教わる側、治療を施す側と治療を受
ける側という上下関係が形成されるのが当然と思っている人が殆どでした。しかし、
近年、自己主張、自主性が尊重され、両者の関係は上下関係でなく対等に限りなく
近づけるのが効果的であるという奇妙な考えが台頭してきました。しかし、相手の
立場を尊重することと、対等であることとは根本的に間違っていませんか。

現実は、自主性尊重の教育理念が歪曲されて、自己主張を戒め我慢させる教育が
学校や病院の現場から少なくなってきました。その結果、学校、病院で特に目立っ
てきたことは、「我慢をしなくなった」人が増えてきました。自己主張は必要で自
己決定権は保障されるべきですが、みんながそれを押し通せば、社会は無秩序で戦
場と化します。周囲に迷惑になるから、少し我慢しようと子供に教えるのは大人の
責任です。

精神分析で有名なフロイト理論に、精神現象の二原則があります。人は「快楽原
則」を持って生まれ、要求に任せて行動することは動物の本能でこれ自体は問題で
はありません。しかし、周囲の事情によっては我慢して待たなければならないこと
があります。この我慢経験から快感原則を「現実原則」によって修正することを学
んで、人は成長してきました。しかし、現代社会ではこの現実原則の習得が疎かに
されていませんか?

それは、子供の意思を尊重し、叱らずに褒めて育てるのが効果的だという教育論
が主流になってきたからです。家庭でも、それを真に受けて叱ることを放棄し見て
みぬ振りをし、学校に指導、躾を要求するようになりました。その上、戦後の教育
を受けて育った年代が保護者となっており、下手に注意すると逆切れして学校を攻
撃するモンスターペアレントが増えてきました。その結果、先生は子供に嫌われる
ような注意・躾をためらう悪循環となり、社会生活を正常に営むために必要な現実
原則を習得する機会が少なくなってきました。人を育てるうえで必要な現実原則に
よる教育を、もう一度実践しなければ日本の未来は明るくはないでしょう。


★☆★☆ ⇒《ホットニュース》
香川大学創立60周年記念講演会開催
http://www.kagawa-u.ac.jp/itwinfo/i2914/
香川大学工学部教授らのプロジェクトチームが芦原科学賞功労賞受賞
http://www.kagawa-u.ac.jp/kagawa-u_eng/itwinfo/i1647/
◎平成21年度 原子力放射線安全功労者について
http://www.kagawa-u.ac.jp/itwinfo/i2909/


★☆★☆ ⇒《話題!!》
遺言について ・・・・・・・・・・石堂 典秀先生に聞く・・・・・・・・・・

――最近では、「エンディング・ノート」として、遺言や遺言の書き方に関心を持
つ方が増えているようですが、遺言について教えてください。
遺言も遺書も亡くなる人の意思を伝えるという点では共通していますが、遺言には
法定事項がありますので、法定事項以外のことを書いても法的効果は生じません。
遺言というと「相続財産の指定」ということが頭に浮かぶと思いますが、それ以外
にも、認知、未成年者の後見人指定、相続人の排除、遺言執行者の指定といった事
項についても書くことができます。また、遺言にもいくつか種類があります。本人
が作成する自筆証書遺言が一般的でしょうが、最近では公正証書遺言も増えている
ようです。この他に秘密証書遺言というものもありますし、事故や病気により死亡
の危急にある人が行う特別方式遺言があります。それぞれの遺言のタイプに応じて
所定の方式・要件がありますので、方式や要件を欠いた遺言は無効とされます。

――なるほど。ところで公正証書遺言とはどのように行うのでしょうか?
公正証書遺言は、公証人役場において、公証人が遺言者の遺言の口述を筆記し、公
正証書遺言として作成するものです。その際、2人以上の証人の立会いが求められ、
筆記内容が正確なことを承認した後署名・捺印します。公正証書遺言については、
遺言書が公証人役場に保管されるため、偽造・変造の危険性がないとして検認が不
要とされています。

――検認制度とはどのようなものなのですか?
遺言書の偽造・変造を防止するために、遺言書の形式・態様を調査・確認するため
に、家庭裁判所で行われる手続です。家庭裁判所での検認が必要とされ、検認を経
ないで遺言を執行すると過料を科されます。もっとも、わが国の検認は、遺言の存
在及び内容の確認をするもので、遺言の有効性そのものを確定する手続ではないの
で、遺言の有効性を争う場合には、検認後に訴えを提起することになります。

――ところで、マイケル・ジャクソンさんの遺言が発見され、話題を集めていまし
たが、日米で遺言に関する法制度に違いはあるのでしょうか。
まず、日本とアメリカでは法体系が全く異なり、さらに、遺言法制については、ア
メリカではそれぞれの州で制定法を有していますので、単純に日米の比較はできな
いということです。そのことを念頭においた上ですが、アメリカの検認手続は、遺
言者の遺言能力や遺言者に対する詐欺や不当威圧等を争う重要な訴訟手続きです。
そのため遺言の検認手続きには相当の時間を要することになるため、その間に、遺
産を管理する相続財産管理人(遺言がある場合には遺言執行者)が指名されます。

マイケルさんも遺言執行者を指定していたようですが――日本では遺言執行者はあ
まり活用されませんが――アメリカでは遺言執行者の役割は非常に重視されていま
す。遺言執行者は、遺言者の有していた相続財産の目録の作成し、債権の回収から
債務の整理などを行って、清算された財産を相続人に引き渡します。遺言執行者が
選任されると、相続人といえども、勝手に相続財産を処分することはできなくなり
ます。そして、遺言執行者は、当然のことながら、遺言で指定するのですが、アメ
リカでは、自分の死亡後のことを考えて、むしろ生前から財産を信頼すべき第三者
(受託者)に託して管理・運用してもらう信託という制度が活用されてきました。

信託では、受託者は、単なる財産の保管者としてではなく、投資を含めた、財産の
適切な管理・運用をすることが求められ、その管理・運用による財産上の収益が財
保有者が指名する受益者に配当することが期待されています。したがって、財産
保有者が死亡した後にも、遺された家族やペットを受益者として指定しておくこと
で、受益者の生活を保障するとともに、自己の財産の保全を図ることもできるわけ
です。マイケル・ジャクソンさんも家族信託を設定していたようです。アメリカで
は、お金持ちだけに限らず、老後のことを考え、年金や保険などを組み合わせなが
ら、老後から自己の死亡後のことを想定した、エステイト・プランニングが行われ
ています。

――――自律の精神ということですね。どうもありがとうございました。
(いしどう のりひで、連合法務研究科教授、民法


★☆★☆ ⇒《研究室の小窓》
3.ソフトウェアって何?第2回 ソフトウェアの品質
・・・・・古川 善吾、高木 智彦

ソフトウェアは大規模化・複雑化の一途をたどっています。これは、製品が多機
能で高機能になっていると同時に、製品の機能をソフトウェアで実現するようにな
ってきていることも一因です。その結果、製品の品質がソフトウェアの品質に大き
く依存するようになりました。要求されるソフトウェアの品質を実現するために、
ソフトウェアを作成する会社は入念にテストをしています。ソフトウェア作成費用
の半分以上がテストに費やされている、ともいわれています。それでも、ソフトウ
ェアの欠陥に起因するシステムのトラブルや製品のリコールは後を絶ちません。な
ぜでしょうか?エンジニアが仕事をサボったから?いえいえ、決してそうとは言い
切れません。

実は、「ソフトウェアに欠陥がない」ことを保証することは、一般的に不可能な
のです。ソフトウェアに入力可能なすべての値の組み合わせと順序、すべての入力
のタイミング、そしてすべての利用環境において、ソフトウェアが誤動作しないこ
とを確認できて、はじめて「ソフトウェアに欠陥がない」といえます。しかし、す
でにお察しの通り、現実的な時間の中でこのようなことを行うことはできません。
もし、完全に保証しようとすれば、とてつもない費用と時間がかかります。もちろ
ん、人命にかかわる航空機や医療機器などで使われるソフトはできる限りテストの
精度を高めているのですが、それだけの費用がかかっているのです。コンピュータ
を使って自動的にテストを行えばよさそうなものですが、ソフトウェアが人間の手
作業で作成されるものである以上、人間が見て判断する以外に方法はないのです。

では、実際にはどのような方法でテストをしているのでしょうか?最も一般的な
のは、ある基準でできるだけ全体を満遍なくチェックする方法です。一度もテスト
していない行に欠陥があって、実際の利用でその行が実行されたら、システムはト
ラブルになってしまいます。これを避けるために、プログラムの中のすべての行を
少なくとも一度はテストする、といったように。その他にも、欠陥の存在する可能
性の高い箇所を重点的にチェックしたり、ソフトウェアの特定の側面について正し
さを数学的に証明したりする方法などもあります。

現在、ソフトウェアの欠陥を効果的に発見するためのソフトウェアテスト法が、
世界中で研究されています。私たちの研究室もその一員として社会に貢献しようと
しています。高品質で安価な製品を実現するために、ソフトウェアテスト法の重要
性は今後さらに増していくでしょう。
(ふるかわ ぜんご、工学部教授、たかぎ ともひこ、工学部助教、ソフトウェア
工学)


=====================================================================
■ 《あとがき》


画期的と言われた政権交代から3か月が経とうとしています。民主党を中心とす
る政府の動きが連日新聞やテレビで報じられていますが、やはり、大事なことは長
い目で見たときに日本の政治がよりよい方向に向かっているかどうかではないかと
思われます。その点マスコミの報道は、具体的な問題にとらわれすぎている気味が
あるので、結局、その分市民一人一人の責任が重くなるということなのでしょうか。
(2T)


=====================================================================
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

香川大学メールマガジン』(隔週発行)

・編集/発行:香川大学広報センター運営委員会、〒760-8521 高松市幸町1-1